東京カートグラフィック株式会社
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 地図の学際 
地図の学際 とは

第9号
9号表紙

1.  分布図が語る東京の昆虫相

2.地震と地図

3.  「地図で書く自分史」のすすめ

4.  2006年 TCG10大ニュース

     

地震と地図
東京大学 地震研究所 地震予知情報センター 助手 鶴岡 弘


図@世界地震地図  地震データについては、Harvard CMT Catalog による
世界地震地図

世界の地震活動図を作成

 日本は、世界でも有数の地震国です。震度3を超える有感地震は全国を対象にすると年間で100以上もあります。 われわれ研究者は、地震が空間的にどのように発生しているのかを調査・研究するにあたって必ず利用するのが地図です。 地図上に震源をプロット(マッピング)して、地震活動の様子を直感的に把握するわけです。地図の図法も用途に応じて メルカトル図法や円錐図法、モルワイデ図法などを使い分けて表示します。震源をプロットするにあたっては、 マグニチュードと呼ばれる地震の規模に応じて大きさを変えて表示したり、地震の深さによって色やシンボルを変えて表示を行います。

 図@は、今回東京カートグラフィック株式会社とともに作成した世界の地震活動図です。地図作成までの過程において、 専門が違うということもあり、視点の違いから意見が異なる場合がありましたが、最終的に、地図と地震がうまく融合できたのではないかと思います。

世界プレート図が語る地震

 図@からは地震についていろいろなことがわかるでしょう。地震は世界中で一様に起こっているわけではなく、 空間的に限られた場所で発生していることがわかります。このことは、1960年代後半に提唱されたプレートテクトニクス理論 によって統一的に理解されます。地球の表面は十数枚のプレートという厚さ100kmほどの岩盤で覆われ、マントル対流によって このプレートが移動する。そして地震は、プレート同士がぶつかりあうプレートの縁の部分で多く発生するという理論です。

 日本で地震が多いのは、東西南北をユーラシア、北アメリカ、フィリピン海、太平洋プレートの4つのプレート(図A参照)が存在しているためです。図@には規模の大きな地震のみをプロットしていますが、地震の性質としてグーテンベルグ・リヒター則というものがあり、これはマグニチュードが1小さくなると地震数がほぼ10倍発生するというもので、図@にプロットされていない小さな地震も非常に多く発生しています。われわれ研究者は、地震動によって建物や人的被害を引き起こす大地震だけでなく、小さな地震の発生を含めて研究・調査することによって地震の発生を理解しようとしています。

 少し地図から離れて地震の話になってしまいましたが、この世界地震地図で地震について知りたくなったら、 東京大学地震研究のホームページにアクセスしてみてください。 最新の研究成果や地震・火山の情報を見ることができます。

高度化している地理情報システム

 電子地図、GISなどの地理情報システムは、最近の計算機の処理性能の向上および記憶装置の大容量化に伴い、 非常に高度化されてきていると思います。その際のキーワードは、「高詳細化」「4次元化」「データベース化」だと思います。 4次元化とは、空間情報+時間情報(時系列)を意味しています。「高詳細化」と「3次元化」を実現したアプリケーション として、グーグルの「Google Earth」があげられるでしょう。

 初めてこのアプリケーションを利用した際の驚きは忘れられません。それほどこのアプリケーションの完成度が高いと 感じました。バーチャルなのにリアル、豊富な機能、そして扱いやすい。次世代の地図システムのプラットフォームの 第一候補ではないでしょうか。アメリカ地質調査所(USGS)のホームページには、最近1週間に世界で起きた地震情報を 準リアルタイムで表示可能なGoogle Earth用のファイルが提供されています。われわれも地震情報の日本対応版の提供を 検討しているところです。World Wide Web によりさまざまな情報が蜘蛛の巣のように複雑に絡み合っていたものを、 Google Earthは地図をキーとして情報集約をうまく実現したように思います。また、Webブラウザのプラグインではなく 専用のブラウザを開発したところにグーグルの意図があるのでしょう。

 次に「高詳細化」と「3次元化」のアプリケーションとしてカーナビをあげたいと思います。カーナビの主要な機能は、 GPSを利用して位置情報をリアルタイムに把握するということです。ここでも地図情報が重要になります。私も自家用車に カーナビを搭載していますが、遠出する際には非常に心強い味方となっています。地震分野でも地殻変動観測において、 このGPSを利用(この場合には、カーナビよりも詳しい位置情報を計算)してプレート間の運動をモニターしている ということもあわせて紹介しておきたいと思います。日本では国土交通省国土地理院が、高密度で高精度な測量網の 構築と広域の地殻変動の監視を目的に、「GEONET(GPS連続観測システム)」と呼ばれる電子基準点を日本全国に 1200点ほど展開し、観測データをホームページで公開しています。

 最後に「4次元化」と「データベース化」です。地図情報は情報量およびその質が今後ますます重要となっていくでしょう。 必要な情報を抽出する際に時間がかかってしまっては利便性が失われるため、データベース化が必須でしょう。 その際にデータベース構造も重要になると思いますが、このあたりは情報技術のさらなる進歩が要求されるのかもしれません。

 実は地震の情報は、地震の発生時刻、位置、およびマグニチュード(規模情報)等からなっており、 通常データベースを構築するわけですが、既存の地図システムで利用できるのは、今回の図@の世界地震地図のように 地図にプロットするという機能だけということが多いため、地震活動解析機能を有するアプリケーションを 別途作成しています。将来、システムが進化してこのような機能が標準搭載される日がやってくることを期待したいと思います。