東京カートグラフィック株式会社
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 地図の学際 
地図の学際 とは

第6号


1.
特別座談会
「地図太郎」の出現で地図は"生きる力"に


2.  趣味とGIS

3.コミュニティー・マッピングとして活躍

4地域づくりを促進するためのツール


5. アドレスマッチングと「地図太郎」
     

地域づくりを促進するためのツール
財団法人日本システム開発研究所 地域資源研究室 工学博士 諸橋和行

「地図太郎」誕生の背景
 「地図太郎」は、住民主体の地域づくりを促進するためのツールとして開発されたGISソフトウェアである。しかしその用途に限定されるものでないことは、本誌に掲載されている諸先生方の事例紹介のとおりである。本ソフトウェアの開発に至る経緯を詳しく知る立場から、当初我々が意図した「地域づくりのツールとしての『地図太郎』」について、少し述べさせていただきたい。
 地域づくりの現場では、いかに住民の関心と意欲を引き出すか、いかに住民の主体的な活動を活発化していくかが重要な課題となっている。行政や専門家だけががんばっても地域は決して活性化しない。その地域の住民が地域づくりの主役とならなければいけないのである。そのための手法の一つとして、「地区力点検」がある。これは「地域住民が協力しながら、行政と協働で、地区の持っている総合的な力について点検し、話し合い、考えることで地域の問題や課題等を明らかにし、今後の方向性を見出していく作業」のことである。全国各地で開催されている地域発見ワークショップなどをイメージしていただければいいだろう。詳しくは総務省自治行政局過疎対策室のホームページ(http://www.kaso-chiikizukuri.net/)をご覧いただきたい。
 地区力点検では、大縮尺の地図や航空写真、模造紙(イラスト地図)などを用意し、参加者に地域のさまざまな情報を書き込んでもらいながら、地域づくりの芽を育てていく。しかし実践で感じたことであるが、書き込まれた地図や模造紙等を保管したり、情報を更新したり、次の場面で結果を活用したりすることが結構大変であった。また、既往の統計的なデータと関連づけることも難しい。点検作業の現場では、紙と筆記用具等を用いたローテクなツールが非常に効果的であるが、点検結果の記録や保管、情報の更新、データ分析などを行う場合は、やはりパソコンの力が必要であり、そのためのツール(ソフトウェア)が強く望まれた。
現場での実践活用にこだわり、地図上に意見やコメント、デジカメ写真等を簡単に記録することができ、多少のパソコン経験がある人であれば無理なく操作できる簡便なソフトウェアが求められたのである。これが「地図太郎」誕生の背景であり、当初意図した活用のイメージは写真\、]のとおりである。もちろん、地区力点検での活用は一例にすぎず「地図太郎」の用途は幅広い。私自身、いろいろな場面で気軽に利用している。その一つとして、新潟県中越地震の被災地における通学路点検活動を紹介させていただく。

手段・道具から目的へと進化
 地震発生後、私は雪の研究者仲間と一緒に、豪雪地帯における積雪期前の大震災という視点を重視し、被災地における冬期の子どもたちの安全・安心を確保するため、各小中学校に対して通学路点検の実施を呼びかけた。そして長岡市立栖吉小学校では、実際に教職員と雪の研究者、土木専門家が一緒に通学路を歩き、危険箇所、早急に修繕が望まれる箇所などを点検するとともに、その結果を「地図太郎」で記録・整理した。この画面イメージを出力・加工し、要点をまとめたレポート(写真^)を作成した。通学路点検の結果を地図、写真、コメントを組み合わせて示すことで、必要な情報を的確に伝えることができる。なお、このレポートは小学校から児童・保護者に配布されている。
 ふと気がつくと、「『地図太郎』を使うために、次は何をしようか」などと考えている。目的と手段が逆になっており、本末転倒ではあるが、案外これは素晴らしいことなのではないかと思う。「地図太郎」が手段・道具から目的へと進化する。これこそがまさに「地図力」なのではないか。「地図太郎」が「地図で物事を考える力」つまりは「生き方」を提供する。そんなコンセプトで成長を続けてほしいと願う次第である。

地域づくりのツールとしての「地図太郎」活用イメージ

写真@ 住民による地区力点検(愛知県豊根村にて)

写真A「地図太郎」にて情報の記録・整理

写真B 通学路点検のレポート