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「地図太郎」の出現で地図は"生きる力"に
東京カートグラフィック鰍ェ開発、販売を開始したGIS入門ソフト「地図太郎」は、発表以来大きな反響を呼んでいます。「地図太郎」は、背景地図として官公庁が提供する数値地図や地図画像、航空写真画像をインターネット上からダウンロードし、その上に利用者が個人の情報(データ、写真等)を入力することで、オリジナルマップが容易に作製できます。
このほど東京カートグラフィックでは、「地図太郎」のバージョンアップを行いました。地図製作や検索、グラフ表示がより便利になったほか、世界の地理データを表示できるなど使い勝手が一段と良くなりました。「地図太郎」の登場は、個人の地図作りや学習での地図利用、コミュニティマップ作製など、地図が身近なものになるものと期待されています。
「地図太郎」の開発には、今井 修(東京大学空間情報科学研究センター特任教授)、太田
弘(慶応義塾普通部教諭、慶應義塾大学教養研究センター)、鈴木厚志(立正大学
地球環境科学部教授)、諸橋和行(財団法人日本システム開発研究所 地域資源研究室
工学博士)の皆さんにご指導、ご協力をいただきました。
「地図太郎」バージョンアップにちなみ、今井、太田、諸橋の皆さんにお集まりいただき、GISと「地図太郎」について語っていただきました。
(東京カートグラフィック 社長 猪原紘太)
「地図太郎」でGISがより身近に
猪原■「地図太郎」はこのほどバージョンアップいたしました。背景地図には、国土地理院の電子国土サイト「ウォッちず」による日本全国の2万5千分の1地形図を自由に読みこめますし、世界地図の読みこみもできるようになりました。発売以来、各方面からお問い合わせをいただき、実際にお使いになられたユーザーの皆様からは貴重なご意見やご感想が寄せられています。たとえば、「水と緑の研究会」様は、河川の水質調査に「地図太郎」を活用され、地域の地図に水質データを重ね合わせ、汚染状況が一目でわかる地図を作製されようとしています。また、日本ウォーキング協会様では、高齢者ウォーキングのためのルートマップ作製に「地図太郎」を利用されました。コースの検討や記録に写真を添付したりして独自のウォーキングマップを作製されています。また、藤沢市立村岡小学校様では、小学6年生の社会科の授業で「地図太郎」をお使いになりました。「村岡の歴史を知ろう」というテーマで、生徒たちが地域に残る史跡や石碑を調べて、地図と写真、コメントを組み合わせてプレゼンテーションしました。
このように、「地図太郎」によってだれもがGISを身近な地図情報として簡便に利用することができるようになりました。これも「地図太郎」の監修にあたられた先生方のご指導によるものと感謝いたしております。今日は、「地図太郎Ver.2.0」のリリースを機会に、これからのGISの発展、また「地図太郎」の意義などについてお話しいただきたいと思います。
今井■GISへの関心は急速に高まってきました。「地図太郎」のようなだれでも簡単に使えるソフトが整備されることによって、潜在ユーザーが掘り起こせるのではないかと思います。行政、教育、産業などの各分野で、今まで手書きで苦労してきた人たちが「地図太郎」を体験すると地図の世界が大きく広がると思います。
太田■最近私は、横浜市立中和田南小学校PTAのお母さん方が作った「子供のための安心・安全マップ」の作製を指導しましたが「第11回マイタウンマップ・コンクール」で奨励賞をいただきました。地域の交通安全、防犯のために必要な情報を落としこんだタウンマップです。作る過程では行政との調整などいろいろ問題はありましたが、これからのGIS応用の方向性を考えていく上で、一つの参考事例になるかと思います。
諸橋■「地図太郎」の開発経緯を振り返ると、当時、当研究所では「過疎地域の活性化」をテーマとした調査研究に取り組んでおり、そのなかで、住民が自分たちの地域の問題・課題を考えるためのツールとしてGISを活用できないかを検討していました。そのためには「初心者でも気軽にそして簡単に使える」ことにこだわった新しいGISソフトが必要と考え、今井先生の協力を得ながら、東京カートグラフィックさんと一緒に開発に取り組み、今日の「地図太郎」へとつながっています。
今井■GISを応用した地図ソフトはこれまでも開発され使われています。「MANDARA」「カシミール」などはそれぞれ利用実績も豊富なソフトです。「地図太郎」は情報の登録の容易さを実現したソフトですから、「地図の作製はこんなに簡単なのだ」ということをもっと広くPRしていく必要がありますね。
太田■今までの地図は基本的に紙の上に描かれたものでしたが、コンピュータと通信ネットワークの発達で、GISのように、パソコン上で動画でも静止画でも自由に利用できるようになりました。GISは紙を超えるメディアによってその利用領域を広げていきます。「子供のための安心・安全マップ」のように、今や地図はコミュニティにおいて欠かすことのできないメディアとなりつつあります。
「地図とは何か」が問われる時代に
今井■「地図とは何か」ということが改めて問われる時代となりました。ビデオカメラや携帯電話の機能と組み合わせることによって、地図は時間と空間を超えて自由に使うことのできるメディアへと変貌しつつあります。地図には長い歴史があり、時代とともに変化してきました。変わらないのは"場所"や"位置"を示すという機能でしたが、現在では時間と空間の情報を重ね合わせることによって、地図における"場"の概念が変わってきました。
諸橋■地域の問題・課題について検討する場合、地図は重要なツールになります。地域づくりの重要な視点は「いかにして地域を元気にするか」であり、そのためには何が問題なのか、どのような資源・特性があるのか、自分たちでできることは何かといったことを、地域が主体となって考えていかねばなりません。地図をうまく活用し、情報を整理することによって、それらの作業が驚くほどやりやすくなります。地図が住民を元気づけ、意欲を高めるといってもいいでしょう。
太田■アメリカには優れたGISソフトがたくさんありますが、開発者もユーザーも大手が中心なのです。コミュニティで使うようにはできていません。その点で「地図太郎」は「コミュニティGIS」というようなGISの新しい利用分野を切り開く地図ソフトだと思います。インターネットやブロードバンドの普及によって、「市民のためのGIS」の時代が来るのではないでしょうか。「地図太郎」を上手に使えばコミュニティのいろいろな問題解決に役立ちます。
今井■これからのGISのもう一つの特徴は「リアルタイムGIS」です。インターネットで世界中の観測ポイントのライブ映像を携帯電話から呼び出して、「今の姿」を地図上に落としこむことも可能です。これを応用すれば、緊急時の災害情報伝達のあり方を大きく変えることが可能になると思います。ビジネスにも新しい利用法があるでしょう。「今の位置」を知らせたり探したりして地図で遊ぶこともできます。
諸橋■災害といえば、現在私は新潟県中越地震の被災地において、豪雪被害の調査を行っていますが、この調査結果をとりまとめ、今後の防災や復旧のあり方を検討するうえでも、GISはきわめて有効な情報を提供してくれます。
太田■GISがこのように一般市民が使えるようになる時代ですから、子どもの時から「地図リテラシー」を学ばせて、地図の正しい読み方、使い方を身につける必要があると思います。地図は人間に必要な位置と時間の関係を教えてくれる重要なメディアです。地図からたくさんの情報を得ることで人間は賢い生き方ができるのだろうと思います。そういう意味で「地図は生きる力」といってもいいのではないでしょうか。
今井■GISの利用で、付加価値のある地図を容易に手にすることができるようになりました。「地図太郎」もバージョンアップしたことで、ますますその用途は広がっていくと思います。今後も積極的なPRを通じて、一般の人たちはもちろん、行政、教育、ビジネスなどさまざまな分野の人たちに「地図太郎」の良さを知ってもらいたいですね。
諸橋■太田先生が「地図は生きる力」といわれましたが、GISの普及と「地図太郎」の出現が、日本の「地図力」を高めることにつながればいいと思います。
猪原■今日はお忙しいなか、「地図太郎」とGISについて大変貴重なお話をありがとうございました。当社では、これからも「地図太郎」の普及のために努力してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

左から 諸橋和行氏、猪原社長、今井修氏、太田弘氏
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