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百科事典との類似点と相違点
大量の情報が集まっていて、陳腐化が緩やかにしか進まず、そして繰り返し利用されるのだが、一つひとつの情報は必ずしも頻繁に利用されるわけではない。そうした点で地図は百科事典とよく似ている。
こうした特徴のために地図も百科事典も電子媒体に収められ、コンピュータで利用されることが多くなった。置き場所をとり、重くて扱いの大変な紙媒体よりも、電子媒体の方がコンパクトで、検索も早いからだ。
ところが、百科事典の方は電子媒体のものが大部分を占めて、紙ベースのものがほぼ消えてしまったのに対して、地図の方はいまだに紙ベースのものが元気を保っている。その原因は一体何だろうか。
私は原因が二つあると思う。一つは地図には俯瞰をするという楽しみがあることだ。自分の注目している地域が周りの地域とどのような位置関係になっているのか、全体を見渡し、関連性をみていくと、思わぬ発見があって楽しいのだ。
誰でも、子供のころ、学習地図帳に目を奪われて、ずっと地図をみつめていた経験が1度や2度はあるだろう。
ところが、この点についてはソフトウエアの進化で、パソコン上の地図でもズーム機能が強化されたことによって、同じようなことができるようになった。
やはり、紙ベースの地図が強い原因は、もう一つの理由、すなわち地図の上にさまざまな情報を載せることで、多様な用途に使えること、ということになるのだろう。
道路情報を加えた道路地図帳、住民の名前を書いた住宅地図、山登りに欠かせない等高線を書き込んだ山岳地図、ミシュランのレストランガイドなど、これまでもさまざまな情報を付加した地図が作られてきた。
街を変えた「おたまっぷ」
そうしたなか、私の知っている地図で最もユニークなのものが、萌え系グッズの販売店やメイド喫茶などのサービス店を書き込んだ「おたまっぷ」と呼ばれる大阪・日本橋の地図だ。
南海電車をなんばの駅で降りて東に向かうと、堺筋の手前に、堺筋と平行に南北に走る道がある。この道に同人誌の「とらのあな」、フィギュアの「コトブキヤ」、コスプレ衣裳の「GEESTORE」、「ヒーロー玩具研究所」などの萌え関連の店が所狭しと並ぶ。
ここを地元の人は“オタロード”と呼んでいる。このオタロードを中心にした地図が「おたまっぷ」なのだ。
大阪の日本橋は、もともと秋葉原と同様の電気街だった。ところが、2001年11月、梅田に大型店のヨドバシカメラが開店してからは顧客を奪われて街は活力を失っていった。それが2年ほど前から、日本橋が急速に賑わうようになった。本家秋葉原と同様の萌えビジネスが急拡大していったからだ。
なぜ東京以外で大阪の日本橋だけが、秋葉原に続くことができたのか。私は「おたまっぷ」の存在が大きかったのだと思っている。「おたまっぷ」は発行部数1万部のフリーマガジンで、日本橋の萌え関連マップとともに、萌え関連企業の広告、クーポンなどが掲載されている。
メイド喫茶などの店頭に置かれるとともに、イベントでも配布されている。萌え系の店は小規模なところが多く、しかも多様なビジネスが存在するために、せっかく出掛けても初めてだとお目当ての店になかなかたどりつけない。
そこに、おたく専門の地図ガイドが提供されたことが、萌えビジネスの活性化に大きく役立ったのだ。地図が地域産業を復活させる力さえ持つことが、証明されたのだ。ちなみに「おたまっぷ」は、最近では本家秋葉原版も発行されるようになっている。
大ヒットしたウンチク地図
もう一つ地図がビジネスを盛り上げた事例をご紹介しよう。青春出版社が2005年6月に出版した『世界で一番おもしろい地図帳』だ。1万部売れたら大ヒットと言われる出版不況のなか、この本はウンチク付きの地図本ブームの先駆けとなって、何と56万部も売れた。表紙には「謎の宝庫・地図の読み方教えます!」と書かれている。
つまり、地図帳と名乗りながらも、地図はあくまでも脇役で、主役はあくまでも地理に関するウンチクなのだ。
例えば、「世界で最もありふれた地名は?」というクイズが出されている。正解はワシントンだそうだ。ワシントンという地名はアメリカだけで1000を超え、世界全体では5000を超えるという。そういう話を聞くと、ついついワシントンという地名を探して地図に目が行ってしまう。
もちろん、全部数えようなどとは思わないが、最初に数えた人はさぞかし大変だっただろう。そのほかにも「世界で一番暑いところはどこ」「世界で一番寒いところは」などさまざまなウンチクが満載なのだ。
青春出版からは続編も出ていて『世界で一番気になる地図帳』は、世界地図に関する素朴な疑問をたくさん載せている。例えばインドネシアやミクロネシア、パラネシアといった地名の「ネシア」というのはどんな意味か。言われてみると、地理にはよく知らないことがたくさんある。それが読んでいくと自然に身につくのだ。
地図が生み出す付加価値
地図は、それをベースにしていろいろな情報を載せることで、どんどん新しい商品を生み出していくことができる。
今は紙媒体が中心だが、将来的には電子媒体でも可能になるだろう。
地図に載せる情報は時代によって変わっていくが、新しい、さまざまな情報を受け入れていく懐の深さを地図が持ち続ける限り、私は地図の命は永遠なのだと思う。
今、この厳しい時代に当社が決して忘れてはならないことは何でしょうか?会長が、私たちに残してくれたこの三つの姿勢がそのすべてだと思います。私たちはこの「東京カートカラー」を決して忘れません。
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