東京カートグラフィック株式会社
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 地図の学際 
地図の学際 とは

第10号
10号表紙

1.  西山会長を偲んで

2.「情報地図」があればスポーツはより楽しくなる

3.  台所に貼りたい「穀菜地図」

4.  地図とサービス ロボティクスにおけるマッピングとタッチマップ開発

5.  地図をめぐる3 つの思い出

6.  『地図の学際』への熱い思い

7.  GIS ソフト「地図太郎」がVer.5.0 へ

     

「情報地図」があればスポーツはより楽しくなる
スポーツジャーナリスト 二宮清純

――スポーツジャーナリストとして、世界各地を歩いてこられて「地図」についてどんなふうにお考えですか

二宮■一般の地図の機能に加えて、サッカーのワールドカップやオリンピックなどに特化した地図があればおもしろいですね。

 たとえばワールドカップなら、各国の出場回数と戦績表付き。優勝回数を示す星印とかがついていれば分かりやすいですね。それに加えて、その国のサッカーの歴史などがコンパクトに付記されていれば、なお分かりやすい。

 日本人はワールドカップが好きで、とりわけ日本が初めて出場した1998年のフランス大会あたりから、現地での日本人観戦者は急増しています。空港あたりで売っていれば、それを買い込んで飛行機に乗り込む人も多いんじゃないでしょうか。機内でちょっとしたサッカーに関する勉強ができますよ。

 あと、歴史的なプレーヤーの寸評などがあればいいですね。ペレ、マラドーナ、ベッケンバウアー、ヨハン・クライフなどに関する評伝があれば、機内での時間はさらに充実したものになりますよ。

 マニアなら「そんなことくらい知っているよ」と言うかもしれないけど、中にはビギナーのファンもいますからね。予備知識があるのとないのとでは、ワールドカップへの接し方も全然違ってきますよ。

 フランス大会を取材した時、ジダンの生家に足を運びました。彼はアルジェリア系移民の2世でマルセイユの移民街出身だということを事前に知っていたからです。

 たまたま私の泊まったホテルのメイドさんが、ジダンの親戚だということで、私を案内してくれたんです。最初は「本当かな?」と疑っていたんですが、地区内のアパートの窓にジダンの顔写真が貼ってあるのを見て確信しましたね。

 1998年、フランスはジダンの活躍もあってワールドカップ初優勝をとげたのですが、このチームの大半は移民系の選手で、右派政党からは「フランス国歌も満足に歌えないようなチームがフランス代表と言えるのか!?」との批判を浴びました。

 このチームのキャプテンはデシャンという選手でした。顔を見れば生粋のフランス人ぽいのですが、実は彼はバスク人でした。民族がモザイクのように絡み合うヨーロッパでは、顔を見たくらいでは何人か分かりません。

 ワンポイントとして、こうした情報まで含まれていたら、その地図はさらに付加価値を増すと思います。

 ついでに各国の国歌の歌詞などもあればいいですね。ヨーロッパでは聞いてびっくりするほど勇ましいものもあるんですよ。世界の政治力学を知る上で、一つのきっかけになるかもしれませんね。

――オリンピック版地図ができるとすれば、その地図にはどんな情報があれば、とお考えですか?

二宮■オリンピック版は過去の金メダル、銀メダル、銅メダルの数なども書き込んでもらいたいですね。サッカーのワールドカップ同様、名選手の物語などが付記されていれば、かなり読み応えのあるものになると思われます。

 加えて競技の歴史的な背景などもあればおもしろいですね。たとえばスキーのジャンプ競技。あれって、一説ではノルウェーにおける囚人に対する刑の執行が起源なんですよね。ガケから突き落とされた囚人が、うまくジャンプし、ソリを使って生き延びられたら、その時点で免責されたそうです。

 トリビア的な要素を含んだ話ですが、こうした予備知識を仕入れた上でノルウェーの地図を見たら、今までとはガラッと印象がかわるかもしれませんね。その意味で「地図」と「地誌」は切っても切れない関係にあり、スポーツは両者を橋渡しする上で最良のコンテンツと言えるかもしれません。